再び粋な計らい
2週間前の「無人駅下車」の中で、アクシデントがなければ生涯降りることのない駅に下車したのも天の粋な計らい、と書いた。ところが、再び粋な計らいである。
この間、台湾で台北、花蓮、高雄、台南と周ってきたのだが、花蓮でのこと。当初は太魯閣峡谷に行く予定だった。しかし、沖縄地方を襲った台風9号は、台湾にも大きな被害をもたらした。訪れたのは台風9号が過ぎた後で天候には恵まれたのだが、大雨による土砂崩れなどの被害が大きかった。
地元のドライバーの人が、「せっかく来たのだから、行けるところまでは行ってみましょう」と努力してくれたのだが、崩れた土石で8号線のいたるところが片側交互通行になっている。復旧作業をしている傍らを慎重に進んでいったのだが、そのうち、もう少しで道路に落ちかかっている大きな岩に穴をあけ、ダイナマイトを仕掛けている現場に差し掛かった。作業をしている人にドライバーがきいたら、30分後に爆破するという。その先に行ってしまうと、爆破処理した土石を道路から除去するまでは戻ることができない。
そこで予定を変更して、さて、どこに行こうか。小生は日本の占領時代の史跡などを観ることにした。ドライバーは地元の人だけに、一般の観光客がめったに行かないような所をよく知っている。将校の住まいや、日本軍が事務所に使っていた建物、特攻隊の宿舎だった所などである。
事務所だった建物では、地元のおばちゃんが4人いて、ボランティアで管理しているとのこと。ノートに名前とどこから来たのかを書いてくれというので「日本」と書いたら歓迎された。そもそも見学者が少ないのだが、ましてや日本人はめったに来ないらしい。高齢の方たちなので日本語が上手で、あれこれ説明していただいた。
お土産もお飾り程度においてあった。僅かでも何か買おうと3点ほど選んだら、これがまた大変だった。お土産を購入する人はまれなようで、おばちゃんたちは大はしゃぎ。日本円にして合計650円程度だが手書きの領収書を発行するという。ところが領収書を書いたことがない人だったので書き方が分からないらしい。そこで書き方を知っている人が教えることになったのだが、わいわい、がやがやと大騒ぎだった。
こんな経験も、天の粋な計らいと受け止めよう。
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