« 社員は社長の姿を等身大に映す鏡 | トップページ | 師走だ! 「先生」たちが走る »

2012年11月26日

基本に忠実であること

 22日に長野に行った。8日には松本に行っているので、今月は信州に2回いったことになる。ずっと昔の若いころに、長野市の安茂里というところに数カ月いた。当時の権堂の商店街の繁栄をいまでもかすかに覚えているが、時の流れと時代の変化を実感する。冬期オリンピックを機に長野駅の東側も開発され、往時とは隔世の感がある。

 今回の長野行きは、全国運輸事業研究協議会(全運研)の研究集会が開かれたからである。今回が第42回なので歴史は長い。今回の全運研では、十勝バスの野村文吾社長を講師にお招きした。路線バスは乗客数が長期減少傾向にある。そのようななかで同社は、2012年3月期決算で実に40年ぶりの増収を実現した。そこで野村社長に講演していただいたのである。

 最初に経営を継いだ時は、長年減収が続いていてリストラなどで凌いでくるなかで、社員の士気も低下し、接客などもぞんざいになっていたという。そこで、ある路線の1つの停留所から営業活動を始めた。付近の家庭を1軒いっけん訪ねて、バスを利用していない人たちから利用しない理由を聞くなど、ニーズをつかむことからスタートした。詳細は割愛するが、様ざまな努力によって、その路線の乗客数が増えてきた。分析するとその停留所からの乗客が増えたのである。そこで次の停留所でも営業拡大に取り組むといったように展開してきた。するとその路線の収入が増えてきた。

 あいさつ月間では、電話などによる市民からの反響もあった。このように具体的な成果が目に見えるようになると、社員のモチベーションも向上する。小学校への出前講話でバスの乗り方などを教えるような活動も続けてきた。この生徒たちはやがて高校生になって通学でバスを利用してくれるようになる。また、通学定期券をもっている高校生には土日は市内乗り放題のサービスもしている。定期券のない友達も一緒に乗るようになり、やがてバス通学になってくれる。さらに、高校生の時に市内のバス路線が頭に入っていれば、社会人になってもバス利用が増えるという狙いだ。

 野村社長は、バスに乗ることが目的ではない。どこに行くというのが目的で、バスはそのための移動手段と言うことが分かったという。そこでバスに乗ることを売るのではなく、目的を売るようにした。ダイヤ編成なども自分たちの都合ではなく、顧客ニーズに基づいて編成するようにした。そのため目的別時刻表なども作成している。その他、様ざまな工夫と努力を積み重ねてきたという。

 本業の路線バス事業で40年ぶりの増収を実現したという記事は、「日経ビジネス」誌ですでに読んでいたが、直接ご本人の言葉で聞くと、やはり様ざまな教訓が伝わってくる。だが、よく考えてみると奇策を講じたわけではない。基本を忠実に実践してきただけである。

« 社員は社長の姿を等身大に映す鏡 | トップページ | 師走だ! 「先生」たちが走る »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事