トンネル事故と物流
中央自動車道の笹子トンネルで天井が崩落し、死傷者を出すという事故があった。このような事故があると必ずといってよいほど、テレビ局の報道番組制作者などからコンタクトがある。なかには復旧が遅れれば品不足などの可能性があるので物流が大変だと、ことさらセンセーショナルに報じようとする意図がありありの番組もある。そのようなコンテに沿った都合のよいコメントを求めてくるのだ。視聴率を稼ぐために危機感を煽るような番組にしたいのだろうと思われる。
もちろん、道路管理のずさんさは大いに非難し、問題点を指摘すべきだろう。だが、こと物流に関してはそれほど大騒ぎをするほどではない。中央自動車道を利用するトラックの多くは、埼玉県の圏央道沿いや東京・三多摩地域などから中京圏とそれ以西に荷物を運ぶ車両と、甲府や松本あるいは伊奈など長野県南部に荷物を運ぶ車両に大別できる。
前者は、東名高速道路よりも中央自動車道を利用した方が距離が短く、所要時間も少ない。それに伴い燃料費も安くすむからである。名古屋以西には中央から名阪というルートになる。今回の事故によって、これらのトラックは東名高速道路や新たに開通した第2東名などを利用するようになった。事情が事情なのでコストや時間は仕方がない。
それに対して後者の多くは20号線を利用している。朝夕の通勤時間帯や休日などは混雑するが、現在のところ混乱ではないようだ。また、大型トラックの多くは夜間走行であり、比較的スムースに走っていると聞いている。それでも20号線の混雑がひどいようなら、大月から139号線で富士吉田を経由して甲府方面に行く。遠回りにはなるが、できるだけ混雑を回避して物流への影響をに最小限にするような工夫と努力をしているのである。
年末年始の道路混雑の心配だが、物流全体からみるとピークは先週、今週、来週であり、帰省などの乗用車が増える前にBtoBの物流の繁忙期が過ぎる。もちろん、これは物流全体の場合で、個別にみると帰省ラッシュの影響が予想される分野もある。宅配便、コンビニや量販店への配送、それにガソリンや軽油、灯油などを運ぶタンクローリーなどである。しかし、今回は対策を練る時間があるので、影響を最小限にするような対応策がとられるものと思われる。
このように物流への影響は、20号線の混雑という状況はあるものの、センセーショナルに騒ぎ立てる程のことではない。それよりもマスコミは、人口減少と大都市への集中化が進み(集中化の是非はともかく)、国内市場が縮小する状況を踏まえれば、新規道路の建設などより、これからは既存インフラの補修・維持に予算を向けるべきだ、という論調の報道をすべきではないか。
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