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2013年4月29日

杞憂であれば幸い

 最近の日本は円安、株高に酔いしれているようだ。たしかに株高で儲けている人たちもいるだろう。円安の恩恵を受けている人たちもいるはずだ。しかし、大部分の人たちには無縁の世界ではないかと思われる。

 労働組合の今春の賃上げ交渉で、あたかも賃金が上がったかのようなムードもある。だが、これはベースアップではなく、一時金が上乗せされただけである。業績の良い会社ならこの間も行われてきたことで、それよりも少し額が増えたに過ぎない(内部留保などからすると、もっと上積み可能ではないか)。しかも、これらは大企業の正規社員の話である。非正規社員や下請けなど中小企業の社員の収入はさほど変わらない。大企業の正規社員なら、これまでも余裕をもった生活ができていたはずだ。問題は非正規社員や中小企業で働く人たちの収入が増えるかどうかなのである。

 1990年代後半に多くの大企業が行ったリストラクチャリングによって、非正規社員や下請け企業などにシワ寄せして利益を得るという構造が構築された。この基本的な構造を変えなければ問題の根本的な解決にはならない。むしろ格差をさらに拡大する結果になる。

 たしかに気分やムードは大切かも知れないが、実態を直視することはそれ以上に重要だ。波及効果が出るまでには時間がかかるというが、本当にそうなるのだろうか?

 日本銀行の「経済・物価情勢の展望」では、2015年度平均の消費者物価上昇率を1.9%(消費税増税の影響を除く)としている。これにしても様ざまな見解があるようで、2%のインフレ目標が達成できるという結論ありきではないか、という見方もある。

 それにしてもマスコミの責任は重大だ。円安、株高その他を、無批判的に礼讃するだけではなく、現象面と実体経済とのギャップをリアルに採りあげる姿勢が必要だろう。現状のマスコミをみていると、カラオケでマイクを独り占めして悦に入っている姿と同じようだ。そして、皆さんもご一緒に歌いましょうと呼びかけながら歌い続ける。

  札は刷れ刷れ 刷るならば 「日出づる国」の このYenを 刷り増すほどに バラ撒けば これぞ真の「黒田節」

 当方は音痴なので歌には加わらず、覚めた眼でみているだけ。これが杞憂であれば幸いだ。

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