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2013年12月 2日

報道コントロールと取材

 やっと再校正が終わった。12月中旬に白桃書房から出版する『ネット通販と当日配送』の校正だ(書店への配本は年明けになる予定)。サブタイトルは『BtoC-ECが日本の物流を変える』である。

 今年の年初から本格的な取材をはじめ、約1年がかりで何とか出版にこぎつけた。レギュラーの仕事はもちろん、緊急で入ってくるイレギュラーの仕事をこなし、その合間を縫っての取材だった。時間がかかった理由はそれだけではない。取材に至るまでが大変だったことにもよる。

 各企業とも最近は広報部による情報コントロールが厳しくなってきている。自社に都合の良い内容なら歓迎するが、意にそわない取材趣旨だと、何かと理由をつけて取材に応じようとしなくなる。とくにフリーの自分などは影響力もないので取材拒否がしやすい(「検討中」ということでいつまでも結論をださないという実質的な取材拒否もある)。かりに、しかたなく取材をセッティングしたとしても、広報担当者が同席するので、取材に応じてくれた人も話せる内容が制約される。取材する側に対しては、広報がその内容はダメ、あの話はダメ、と少しでも切り込んだ内容にはストップをかける。

 こちらが話を聞きたいと思っている人も、そのような事情が分かっているので、それでは取材にならないでしょうと理解を示してくれた。そして、取材ということではなく個人的な情報交換ということにして、広報を通さずに会うことにしましょう、と多くの人が時間を割いてくれた。このような形で取材ができたのも自分1人の力ではなく、仲介してくれる方がたの協力があってのことである。

 しかし、これが本来の取材だと思っている。先方が喜ぶような取材では、企業のPRのような記事になってしまい、それを何社も並べたらカタログ集同然の本になってしまう。書店のビジネスコーナーには、それに類する本がたくさん並んでいる。

 校正などをしている間に、特定秘密保護法案が衆議院で強行採決され、現在、参議院で審議中だ。といっても、議会で審議するよりも「個室」で審議? している時間の方がずっと長いのではないかと思うのだが......。

 ともかく担当大臣が恣意的に特定秘密を指定できるという恐ろしい法律である。自分は国家秘密などを取材対象にしていないが、それでも企業のPRにならないような取材をしようとすると苦労する。特定秘密保護法ができると、報道機関が政府の意にそわないような取材や報道が難しくなってしまう。その結果、大本営発表だけしか国民に知らされないような社会になっては大変だ。

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