「みなし」景気
新年会シーズンである。例年のことだが、案内状をいただいた企業や団体などにはできるだけ出席するようにしている。普段はなかなか会えないような方に会って、新年のあいさつをすることができるからだ。
新年会で主催者や来賓のあいさつを聞いていると、ほとんどが「アベノミクスで景気が云々...」という話になる。新年のあいさつということもあって、誰も悪いことはいわない。そこで景気は徐じょに良くなっているというあいさつになる。だが、話している本人が本当に確信を持ってそういっているのかというと、必ずしもそうとは受け取れないようなニュアンスを感じる。
1月9日に日本銀行が「生活意識に関するアンケート調査(2013年12月調査)」の結果を発表した。これは日銀が1993年以降、定期的に行っている一種の世論調査で、昨年12月調査の有効回答数は2,241人であった。同調査によると、1年前と比べた景況感では、「悪くなった」という回答が21.5%で、前々回調査(13年6月)が18.0%、前回(13年9月)が20.6%なので、少しずつ増えてきている。それに対して「良くなった」という回答は前々回13.2%、前回12.3%、今回12.3%で、ほぼ横ばいである。
現在と比較して1年後をどう予測しているかでは、「悪くなる」という回答が前々回16.8%、前回25.8%、今回29.9%となっている。反対に「良くなる」という回答は、前々回24.3%、前回16.2%、今回15.9%という結果だ。1年後は現在よりも景気が良くなるだろうと感じている人が減少し、悪くなるだろうと思っている人が増加しているという結果だ。
同調査では、これらの景気判断の根拠についても聞いている(2つまでの複数回答)。それによると「自分や家族の収入状況から」が58.4%、「勤め先や自分の店の経営状況から」が34.1%である。つまり、身近な生活実感からの回答である。収入についても1年前より「減った」という回答が前々回、前回、今回の順で増加している。1年後の収入予想でも、「減る」という回答が前々回、前回、今回の順で増えている。
このようにみると、ムードとしては景気回復感が支配しているが、その実態は「みなし」景気といわざるを得ないのではないだろうか。
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