ドライバー不足と「倍返し」
トラック運送業界における人手不足は深刻だ。人手不足によるトラック不足で、スポット運賃は上昇している。冷凍・冷蔵食品輸送大手の何人かの社長と話していたら、昨年の暮れに大型車による長距離輸送で、商品によっては通常の2倍の運賃にまでなったケースがあるという。
3月の年度末には4月からの消費税増税の前倒し需要が見込まれるため、どんな状況になるのか予想もつかない。当然、需給関係から運賃が上昇するだろう。ただし、上昇するのはスポット運賃なので、4月以降にはその反動がくることも考えられる。スポット運賃ではなく、ベース運賃が上昇してはじめて運賃値上げ傾向といえる。この点をわきまえないと、運賃上昇ムードだけで終わってしまう可能性も否定できない。
先の何人かの社長との会話の中で、中型免許の動向も話題にのぼった。その流れで、自分たちがどのような免許や資格などを持っているかという話になった。運行管理者やフォークリフト、その他である。運転免許は普通免許だけという社長もいれば、大型免許も持っているという社長もいた。すると普通免許だけの社長が大型免許を持っている社長に対して、「繁忙期にはウチにきて大型車に乗ってよ」といったので大笑いになった。現場の繁忙期には社長はどうせ閑だろうから、というのが理由だが、その点では皆の意見が一致した。
たしかに一定規模以上の会社になれば、繁忙期に社長が忙しいようでは困る。社長はその先のことを考えているようでなければいけない。だが、ルーチンで動いている現場は大変な状態である。人手不足の中で、限られた時間内に多くの仕事をこなすには、現有勢力の過重労働で凌ぐしかない。
ある大手の孫請け事業者では、拠点間の幹線輸送で遠方の拠点に行ったドライバーが、さらに行った先の拠点管轄の仕事を何日か行う。その後に先方からの幹線輸送の荷物を積んで帰ってくる、といった実態もあるようだ。
そのような勤務状態でも、聞くところによると手当は僅かしかつかない。一方、出掛けたままなので外食費が増えるために割が合わない、という。
なぜ、そのような状況になっているのか。その大手事業者は、この間、何度かにわたって下請け運賃を値下げし、それに伴って孫請け運賃も値下げされてきた。そのため人手不足によるトラック不足になってきた現在、「頭を下げられても、値下げした大手事業者にはトラックを出さない」という孫請け事業者たちが増えてきているからだ。
ドライバー不足が深刻化する中で、運賃値下げをしてきた大手事業者に対する、孫請け曾孫請け事業者たちの「倍返し」である。
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