人手不足とコンプライアンス
普段はほとんど車を運転しない。正月休みに約4か月ぶりに車で出かけたら、道路がかなり混んでいた。年末年始の連休で乗用車が多いのは分かる。だが、トラックも多く、ドライバーの人たちも正月ぐらい休みたいだろうに、という思いを強くした。
昨年12月16日づけで「トラック不足の影響が自分にも」と書いた。12月の発売を予定していた拙著『ネット通販と当日配送~BtoC-ECが日本の物流を変える~』が、年末にはトラック不足で物流の混乱が予想されるため、出版社の営業担当者の意見にしたがって年明けの販売になった、という話である。ところが、年が明けて正月になっても人手不足によるトラック不足がかなり深刻な状況のようだ。とくに宅配便や路線便では、人手不足のために正月すら休めないドライバーも少なくない。
ある大手事業者の孫請けで、拠点間輸送を行っている運送会社などでは、元旦や2日に休みを取ることすら厳しい状況にある。なんとか1日と2日に休みを取ったが、それも完全な休みではなく、「待機」状態なのだという。携帯電話に連絡が入ったら、いつでも勤務に就けるようにしている、という状態である。
ドライバーを募集してもなかなか応募者がいない。中小運送会社で、労働条件が悪い元請事業者の下請け、孫請けの仕事をしているようなケースではとくに難しいようだ。応募者が、あそこ(大手事業者)の下請けでは仕事がキツイということを知っているからだという。
聞くところによると、ある孫請け会社が大型車の長距離ドライバーを募集した。応募者が面接の日時に会社の近くまで行ったのだが、その会社の隣に大手事業者の営業所があった。そこで、ひょっとするとその大手事業者の幹線輸送を下請けでやっているのかも知れないと思ったので、会社の前から携帯で電話をして確認した。すると、やはりその大手事業者の幹線輸送をしているという答えが返ってきたので、「それなら応募を辞退するので、今日の面接はキャンセルにして下さい」といって帰ってしまったという。
人手を確保するために、なかには高給をエサにドライバーを引きぬく中小運送事業者もいる。だが、高給を払うのは3カ月間だけで、4カ月目からは安い給料にするようなケースもあるようだ。そんな給料なら元の会社にいた方がましだった、と嘆くドライバーもいるという。
こうなると詐欺と同じである。そんな会社の経営者はどのような感覚の持ち主なのか。事業許可を取り消せるような制度にすべきである。他方、ハローワークや求人媒体を発行している会社などに対しても、ペナルティを課すようにすべきではないだろうか。
年度末にかけては消費税増税前の駆け込み需要も予想される。昨年の年末以上に、人手不足による物流の混乱が予想される。
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