「宿命論」では前進がない
先日、若い営業マンが2人づれで当方の事務所に来た。NTT東日本から委託されている会社の販売受託社員である。用件は電話回線に関することで、契約と工事日時の打ち合わせだった。
仕事の話が一段落して雑談になったら、そのうちの1人(先輩格)が大学で物流を学んだという。その大学は5、6年前に日本物流学会の全国大会が開かれたので行ったことがある。同君はその後、別の大学にもいって物流以外の学科を学んだようだが、物流を学んだ同期の中には大手の物流会社で働いている人もいるという話だった。
厚生労働省と文部科学省が16日に発表した、今春の大学(4月1日現在)、高校・中学(3月末現在)の新卒者の就職率は、いずれも前年同期を上回った。そのうち大学生の就職率(卒業生の就職希望者数に対する就職者数の割合)は94.4%で、過去最低だった2011年の91.0%から毎年上昇している。だが、過去最高だった2008年の96.9%には及ばない。つまり、リーマンショック前の水準までは回復していないことになる。とくに大企業への就職は依然として厳しい状況のようだ。
一方、高校新卒者の就職率は96.6%で4年連続して上昇した。これは1992年の96.9%以来22年ぶりの高水準である。この背景には、企業の採用意欲の高まりがある。とくに労働力不足が深刻な業種の現場での需要が高まっているからである。
これら大卒者と高卒者の就職状況を併せて判断すると、企業は「人手」不足への対応は喫緊の課題としているが、「人材」は厳選して絞り込むような構造といえる。また、狭き門の大企業には就職希望者が殺到し、中小企業は求人意欲が高いにもかかわらず希望者が少ない傾向があるようだ。このように新卒者の就職率からも、これからの日本の経済構造の方向性がみえてくる。
ダイヤモンド・フリードマン社が発行している「Chain Store Age」(5月15日号)の「編集長のPAPER BLOG」では、外食チェーン店やファストファッション店などの人手不足を採りあげている。そして「労働環境同様、流通業の人手不足の主因は、低生産性にある」ことを指摘し、「製造小売化の目的のひとつは、この打開にあるといっていい」と書いている。
大学で物流を勉強したという冒頭の若い営業担当者が、なぜ別の職種に進んだかは聞かなかった。若い人たちが敬遠する理由として3Kを掲げる人が多いが、職場環境ということだけでは「宿命論」になってしまう。「宿命論」は時には免罪符にもなり、それでは前進しない。やはり生産性の低さをどう克服するか、なのである。
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