« 「宿命論」では前進がない | トップページ | 風化と慣れ »

2014年5月26日

玉石混淆の中の玉

 先週は国土交通省自動車局長の諮問機関である「トラック産業の健全化・活性化に向けた有識者懇談会」が開かれた。その中で「活性化に向けた事業展開のあり方」について報告した。

 業界の活性化に向けたアプローチの方法はいろいろあると思うが、時間の制約もあるので「業界が直面している諸課題を克服している事業者の事例」の紹介を通して、業界活性化の方向性を示唆するような発表方法を採った。懇談会の内容については国交省から公式発表があるので、ここで詳しく記すことはできないが、自分が発表した主たる項目を記すと、①サーチャージ問題と燃料コストへの対応、②原価計算と運賃・料金問題、③拘束時間クリアの問題、④労働力不足への対応である。

 これらの諸課題を上手にクリアしている活力ある事業者の事例を紹介し、業界活性化の方向性を考えよう、という手法である。したがって今回発表したのは受動的な面で活力のある事業者の事例であり、提案営業や独自サービスの創造など能動的な面で活力ある事業者の事例ではない。

 業界の活性化のためにどうすべきか、といったことは頭でいくら考えても限界がある。答えは頭の中にではなく現場にあるのだ。正確には、答えを導くために必要なヒントは現場にある、と表現すべきだろう。現場こそ最高の先生なのである。

 ただ、現場は玉石混淆であり、しかも大部分が「石」で、「玉」は極めて少ない。そのため希少価値ともいえる「玉」を探し出すのが大変なのである。また、圧倒的多数の「石」の中から、ごく僅かな「玉」を見分ける眼がないと、総てが「石」にしか見えない。このように玉石混淆の中から希少な「玉」を拾い出し、その事例からヒントを得て自社の条件に応用する。それによって元気の良い活力にあふれた事業者が増えていくことが業界全体の活性化につながる。ヒントを得て応用する力のない事業者は市場から撤退せざるを得ないが、それは公平競争の結果なのである。

 また、ここで重要なことは、業界の活性化は利用者の利便性とトレードオフの関係ではない、という点である。現実には、業界の活性化を利用者の利便性とトレードオフの関係でとらえるような発想が少なくない。このような考え方が支配的な業界では、産業としての健全な発展は望めない。「石」が多く「玉」が少ない所以でもある。

« 「宿命論」では前進がない | トップページ | 風化と慣れ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事