過積載
たまには「物流コラム」らしくしないといけない。国土交通省は2倍を超える過積載の違反事業者を、今秋から即座に刑事告発する方針を示した。同省道路局は直轄国道の道路橋に39カ所の自動計測装置を設置しているが、そのデータによると過積載の大型車両は0.3%という。昔と比べると過積載はかなり少なくなった。しかし、0.3%の過積載の車両が、道路の劣化への影響度では91.5%を占めるという。このようなことから悪質事業者は即座に刑事告発するようにしたのである。
そこで、30年近くも前のことを思い出した。当時、ある県の警察署が4倍の過積載で鉄鋼輸送の事業者を検挙したという記事を読んだ。はたして4倍もの過積載が可能だろうか、という疑問がわいてきたので、その警察署に単独での取材を申し込んだ。発表資料の説明を受けてから、4倍の過積載について質問した。警察としては、自分たちの取り調べ結果に疑問を持たれたことが面白くない。大新聞の記者でも発表した内容をそのまま記事にするのに、こいつは何だという不快感をあからさまにしたが、それでも疑問点を質した。
次に鉄鋼輸送の同業者を訪ね、4倍の過積載が可能かどうかを聞いた。H鋼や加工した鋼材などは形状からムリだが、丸鋼や鋼板などは隙間なく積めるので可能という。検挙された事業者は丸鋼を積んでいた。今度は車両メーカーや架装メーカーである。構造的にも運転上も極めて危険ではあるが、条件が整えば4倍の過積載での走行も不可能ではないという。警察では、ドライバーが運転していて身の危険を感じたので出頭してきたから検挙につながった、といっていた。
そこで荷主企業と検挙された事業者への取材である。その当時は多少の過積載は当たり前のような雰囲気もあったが、荷主もさすがに4倍の過積載を強要(教唆)はしていない。荷主の出荷場からは1.3倍ぐらいの過積載で3台の車両で出発し、事業者の施設内でそれらの荷物を1台分に仕立てていた。つまり積載重量通りなら4台分の荷物を1台で運ぶという仕組みである。問題はそれを事業者が考えたのか、荷主が裏で仕組んでいたのかだが、結局その点については分からなかった。前者なら事業者が儲けを増やすためにやっていたことになる。後者なら荷主のコスト削減だが、自分の出荷場からは4倍もの過積載はいっさいさせていない、と言い逃れることができるというわけだ。
いずれにしても、検挙された事業者は1人で取材に行くには危険を感じる場所に事務所があり、雰囲気も尋常ではなかったことを思い出した。
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