1兆6823億円市場
6月下旬は上場企業の株主総会が集中する。3月決算の企業が多いからだ。決算結果は5月中に発表されるので、主要な物流企業の決算が出そろった。連結決算の売上高をみると、日本通運1兆7524億円、ヤマトHD1兆3746億円、SGホールディングス8350億円、日立物流6245億円、セイノーHD5434億円、山九4344億円、郵船ロジスティクス4060億円、センコー3338億円、近鉄エクスプレス2815億円、福山通運2554億円といったところである。
ところで、主要な物流企業の決算結果が出そろうこの時期になると、毎年、考えることがある。それは市場規模ということだ。
1兆6823億円というのは何という会社の売上高かご存知だろうか。実はこの金額は1社の売上高ではない。出版科学研究所発表の2013年における書籍・雑誌の推定販売金額である(電子書籍を除く)。内訳は書籍が7851億円、雑誌が8972億円(月刊誌等7124億円、週刊誌1848億円)である。書籍・雑誌の販売金額はピーク時の1996年(2兆6564億円)の約63%まで縮小してしまった。
日本通運の売上が1兆7524億円なので、書籍・雑誌は日通1社の売上よりも少ないことになる。そのような市場規模のなかで、書店やコンビニなどの小売店、取次(本の問屋)、版元(出版社)、印刷・製本業界、デザイナーなどの関係者、カメラマンや著者、さらに加えるなら書籍や雑誌を取り扱っている倉庫・運送事業者などが飯を食っている。
もちろん、これらの中には書籍・雑誌以外の取り扱いをしている企業もある。だが、書店や取次、出版社などは1兆6823億円の中でほぼ100%食べているといって良いだろう。
出版社もリスクを避けたいので、なかなか出版契約をしてくれない。バブルのころはビジネス書も売れたので、出版社の方から執筆依頼のオファーがあったものだ。バブル崩壊後も5、6年前ごろまでは、書きたい本のテーマがある時は出版社に企画書を持ち込めばほぼ出版契約ができた。ところがここ2、3年は、原稿を書き上げて、その原稿を読んでもらった上で出版交渉という形になってきた(少なくとも自分の場合には)。
拙著が売れないのは決して市場規模の問題ではないが、分け前が極めて少ないのは当然かもしれない。それでも、1兆6823億円市場の片隅で細々と生きていこうと思っている。
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