備えあれば‥とは言うが
2週間前の「20年前」でも書いたが、阪神淡路大震災から20年余が過ぎた。あと1カ月余りで東日本大震災から4年になる。早いものだ。
東日本大震災の日に、都内のある中小企業の経営者は、夜、自家用車で会社から自宅に帰った。道路が混雑していてなかなか車が前に進まない。電車や地下鉄などの公共交通機関がマヒ状態なので、道路の両側の歩道も歩いて帰宅を急ぐ人たちがたくさんいた。
車がほとんど進まないような状態なので、その社長は歩道を観察していた。すると、あることに気づいたという。ヘルメットをかぶり防災グッズを背負って歩いている人たちと、普通の状態で歩いて帰宅を急いでいる人たちがいる、ということだ。ヘルメットにはたいてい社名が書いてある。そこで注意して観ていたら、ヘルメットに書かれている社名は、いずれも有名企業だったという。
後日、この社長は私に「災害に備えて防災グッズを社員数だけ揃えている会社とそうでない会社。その違いはこんな時に現れる。企業力の差をまざまざと実感した。その点、わが社はまだまだと思った」と感想を述べていた。それを聞いて、いかにも経営者らしい着眼点と受け止め方だな、と思ったものである。
先週のことである。当社といっても1人の会社だし、事務所も約1.5坪、およそ3畳の空間だが、防災グッズが備えられた。1人や2人で仕事をしている人たちを対象に、小さなスペースの事務所を提供するサービスをしている会社の担当者が来て、防災グッズを支給してくれたのである。
肩から斜めに背負えるバックで、黒地に反射色で△印が入っている。興味をもってバックの中身を調べたら、軍手、冷熱遮断アルミシート、携帯ミニトイレ、救急組、マスク、普通のティッシュペーパー、ウェットティッシュ、乾パンが入っていた。ヘルメットはないが、これで我が社もエクセレント・カンパニーに1mmぐらい近づくことができたかも知れない?
しかし、である。「備えあれば‥‥」とは言うものの、いつ起きるか分からない災害は、正直なところ怖い。備えあっても憂いを払拭することはできない。狭い事務所の片隅に備えてある防災グッズが、無用の長物になることが一番望ましい。
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