ドローン
首相官邸の屋上にドローン(小型無人飛行機)が落ちていた。自分がやったと出頭してきた容疑者がいる。容疑者の供述通りなのか、あるいはもっと深い裏があるのかは分からない。だが、テロリストの仕業だったら大事件になっていた可能性がある。警備体制など、実にお粗末と言わざるを得ない。
ドローンというものを知ったのは約2年前だった。ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムが、「オクトコプター」という小型無人飛行機で宅配をする、という構想を打ち出したからである。同社の発表によると、距離は物流センターから半径10マイル(約16㎞)で、重量的には5ポンド(約2.2kg)までの商品を運べる。重量でみると、同社が販売している商品の約80%に該当するという。
日本のマスコミも、このアマゾンの計画を取り上げた。マスコミからすると格好のネタだったからである。だが、週刊「プレイボーイ」(2013年12月30日号)でもコメントしておいたように、自分は宅配への活用という点では否定的だ。
かりに日本で宅配に活用するとして、飛行許可や飛行条件などの法的な問題、また純粋に技術的な課題などがクリアできたとしても、コスト的に合わないからである。まず飛行距離を半径20㎞と仮定しても、広域エリアを面としてカバーするには、40㎞間隔で碁盤目状にデポを配置しなければならない。しかもオーダーを受けたらすぐに配達するには、各デポに在庫を置く必要がある。人員配置も同様だ。そのように考えるとコスト的に合わない。
したがってドローンを活用した宅配は、構想としては面白いが現実性が乏しい。様ざまな条件を総合的に判断してドローンによる宅配しかないだろう、というごく限られた狭域での活用以外には、宅配での実用化は非現実的と思われる。
今回の事態を受けて、あるドローンメーカーでは、飛行禁止区域圏内に入ると自動的に着陸し、離陸できなくなるようなプログラムにするという。だが、テロリストにとってはその程度のプログラムならどうにでもできる。テロ防止や安全性などからはドローンを規制することが必要だ。一方、ドローンを有効に活かせる分野はいろいろあるので、規制がその可能性を制約するようなことになってはいけない。「頭(上)の痛い」問題である。
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