なぜ酒の安売り規制
今年の大型連休は全国的におおむね好天に恵まれた。1カ月ほど前には真冬並みの日もあったのに、連休中は夏のような日が続いた。連休明けも平年を上回る気温の日が多い。これから半年間はクールビズで過ごせる。仕事帰りには軽くビールでも、という季節の到来である。
まっすぐ帰宅して晩酌という人も多いかと思うが、与党では今国会での成立を目指して、酒の安売りを規制する法案を準備しているようだ。報道などによると、規制案では「公正な取引の基準」を財務相が定めて、それに従わないと販売免許の取り消しもできるようにするらしい。
ところで酒の安売りが法律違反なのだろうか? 仕入原価を割り込むような不当廉売で、健全な競争を阻害しているというなら独禁法で取り締まれば良い。そもそも原価を割り込むような安売りを続けていたら倒産してしまう。安く販売しても経営が成り立つということは、仕入原価を安くしたり、販売経費を低く押さえたりして、消費者に廉価で販売できるような努力をしているからだ。
消費者利益のための創意・工夫を促進するのが規制緩和であり(新規参入の距離基準は2001年1月、人口基準は2006年9月に廃止)、その努力が競争である。つまり、販売価格の設定が競争なのではなく、販売価格は競争の結果なのだ。
酒税法では酒類によって税率を決めている。この酒税は、酒類製造者(メーカー)は製造場から移出した酒類について、酒類取引者(輸入販売)は保税地域から引き取った酒類について納める。いわゆる蔵出し税であり、小売業の仕入原価には酒税が含まれているから、酒税を誤魔化してその分を安く売っているわけではない。違法ではないのに安売りを規制することは消費者から安く買う機会を奪うことになる。
酒屋さんの業界団体である全国小売酒販組合中央会は、2012年7月に民事再生法を申請した。負債は、年金掛金返還債務が約140億円、借入金が約10億円の計約150億円である。このようなことから判断すると、酒の安売り規制は、酒屋さんたちの年金掛金返還債務を実質的には消費者に転嫁するためではないか、と思えてくる。ちなみに自分は酒はほとんど飲まない。
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