紀伊半島一周
先週は奈良に行ったので、良い機会と紀伊半島を一周した。羽田から南紀白浜空港を利用したことはあるが、鉄道で紀伊半島を一周してみたいと以前から思っていたからだ。
奈良から和歌山に行き、和歌山城などを観て、次の特急で新宮へ。新宮では熊野速玉大社などを観た。雨だったが和歌山から新宮までの特急の車窓から、橋杭岩など海岸沿いの風景を眺めた。一方は海岸近くまで山裾で、その間の僅かな土地に人びとが暮らしている。雨が小止みになると山並みの上の方を雨雲が覆うが、その様をみるとたしかに神々が住んでいそうだ、という気になってくる。
新宮に一泊し、翌日は熊野に行った。次の名古屋行きの特急まで3時間余あり、天候も回復したのでレンタサイクルで獅子岩や花の窟などを見学した。
観光ガイドなどにはほとんど載っていないが、神仙洞というのがある。獅子岩から花の窟の方に向かって20~30mぐらい、42号線と旧道が交わったところに海側に突きでた大きな岩がある。人面岩とも呼ばれているようだ。大きな岩には空洞があるが、道路との境界線に沿ってフェンスがあって入れない。たまたまフェンスの入口が少し開いていて、中に人がいるようなので声をかけてみた。すると入っても良いと言ってくれた。
話によると、ずっと昔は地蔵さんがあり、自由に入れるようにしていたという。古来の熊野古道はその岩の下の海岸線だった。波打ち際を歩いてきた人たちが、岩場をあがり地蔵さんを拝んで再び海岸線の熊野古道を歩いて行った。近代になってからは旧42号線ができ、さらに現在では新道になった。そうなると中に入っていろいろな物を持ち去ってしまう人たちがいるため、30年以上も前に立ち入り禁止にしたという。
じつは国立公園の一部なのだが、ここだけ個人の所有になっている。現在の所有者は名古屋在住の人で、毎月1回、掃除などのために来ている。偶然にもその人だったのである。話によると明治のころに、獅子岩も国が売りに出したが、誰も買い手がいなかった。神仙洞(人面岩)だけ民間人が購入し、さらに売買が繰り返されて8番目の所有者になったのがその人の祖父だった。
固定資産税などを聞いたら、神社などと同じ扱いで非課税らしい。しかし、木を伐採するにも環境省の許可がいるし、掃除などもしてくれといわれ、個人で維持するのも大変なようだ。息子の考えもあるだろうが、国に譲ることも考えているという。思いがけず面白い話が聞けた。
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