ジェネリック再考
1カ月前に「摂生か薬か」(6月8日)と題して書いた。長年にわたって定期的に健診してもらっている医師に、薬をジェネリックにしてくれと言ったら、あからさまに嫌な顔をされた、といった内容である。
数日前に定期健診で行った。次回の予約日時を決めた後で、今回もジェネリックと言ったところ、「薬の処方だけなら診療所でもできるので、総合病院に来ることはありません。次回までに診断書を書いておきますので、次回以降は最寄りの診療所に行くようにしてください」と言われた。
再診は予約制なので待たされることはほとんどない。だが診察といっても、その後どうですかと尋ねて、あとは血液や尿検査の結果を見て薬を処方するだけ。診察時間はほんの数分である。しかし、同じ数分なら、医師としては薬代を取れる方が生産性が高いことになる。ジェネリックでは単位時間当たりの売上が大幅ダウンになってしまう。
当方は、医師も大変だなと同情するとともに、これが日本の医療制度の実態か、と覚めた眼でみる。しかし、総合病院に来る必要はないから診療所に行きなさいと言われたら、気の弱い人は医師から見放されたと受け止めるかもしれない。
アメリカの国内事情でTPP交渉は当初の予定より遅れているようだ。しかし、いずれはTPPが発足し日本も加盟するだろう。そうなると、経済面だけではなく社会全体が今以上にアメリカン・スタンダード化されるのではないかと推測している。医療や保険制度なども例外ではない。
アメリカの医療保険制度は複雑なようだが、どうも自由診療の考え方が基本になっているのではないかと思う。一方、日本でも国民皆保険制度が衰退し、自由診療が幅を利かすようになってくる可能性がある。病院や医師も、保険診療よりも金になる自由診療の患者を優先するようになるだろう。その方が生産性が高い(儲けが大きい)からだ。そうなると貧富の差に関わらず誰でも病人になるが、金持ちでないと患者にはなれない。
ジェネリックから、とんでもない方向に思考が飛躍してしまった。医師の前でこんなことを話すと、あなたは妄想癖があるのでそちらの薬も出しておきましょう、となりそうだ。その時は、ジェネリックでお願いしますと言うことにしよう。
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