長距離フェリー
長距離フェリー「さんふらわあ だいせつ」で火災があった。出張先でニュースを知り、様ざまなことを思い出した。苫小牧にはちょうど2週間前に取材で行ったばかりである。
苫小牧~大洗航路が開設されたのが30年前の1985年3月。大洗港(現在の名称は茨城港)から出航する第1便に取材で乗船した。出港に先立ち、大洗港に接岸した日本沿海フェリー(現在の商船三井フェリー)のフェリー船内で、多数の関係者によるセレモニーがあった。宴がお開きとなった後の静寂を感じながら、静かに動き出した船のデッキに立って、離れゆく深夜の岸壁を眺めていたことを思い出した。
翌日は船内を取材して回った。船長室では船長が自らコーヒーをいれてくれた。機関室で機関長から話を聞き、エンジンルームも見せてもらった。物凄い音と振動、それに熱気を記憶している。操舵室にも入れてもらい、広大な海を切り割いて進む船の舳先を眺めた。トラック・ドライバーの人たちがくつろいでいる部屋も訪ね、話を聞いたりもした。同航路は、その後も取材で北海道に行く時に何度か利用している。
フェリーは航路の距離によって近距離、中距離、長距離フェリーに分類できる。近距離フェリーは旅客の利用割合が高く、運ぶ車両も乗用車が多くなる。長距離フェリーは夏休みなど特定の期間を除くと旅客の人数は少なく、貨物輸送車を運ぶ割合が高い。貨物輸送車には普通のトラック(単車)と、トレーラのシャーシ(非牽引車)の無人航送がある。単車ではドライバーの人もたいていは一緒に乗船する。それに対して一般的には航路の距離が長いほどシャーシだけの無人航送が多くなる。
航行中は乗員以外、乗客はトラックを積み込むデッキには入れない。トラックには冷凍・冷蔵車もあり、道路を走行中は自動車のエンジンで冷凍機を作動している。だが、航行中はエンジンを切らなければならないので、船の電源から電気を供給して冷凍機を動かしている。ニュースで出火元を知り、直感的に冷凍車の冷凍機の故障か、あるいは冷凍機に電気を送るコードなどに出火原因があるのではないかと思った。
今回のフェリー火災は苫小牧港の近くで、日没前だったことにより、多くの船が人命救助に当ることができた。船長の判断も良かったと思う。専門家の調査で、いずれ出火の原因も明らかにされるだろう。
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