五輪エンブレム
東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが撤回になった。撤回して良かったとは思うが、どうも釈然としない。
まず盗作かどうかである。撤回したデザインは似ていないこともないが、盗作とまでは言えないような気がする。それよりもコンペに応募した最初のデザインの方が、盗作とみなされても仕方がないように感じた。
不思議なのは2回も修正されていることだ。それも微修正という範囲を超えている。これでは佐野研二郎氏の作品ではなく、審査委員会との共同制作といった方が良い。それほど修正しなければならない原案なのに、なぜ、選ばれたのかも不可解である。
佐野氏はエンブレムはパクっていないと言っている。だが、サントリーのトートバッグは30種類のうち8種類が盗作だったことを認めた。スタッフがデザインしたと言うが、佐野研二郎氏の名前で公にしているのだから責任は免れない。実際に誰がデザインしたかは内部の問題であって、対外的に責任を問われるのは佐野氏だ。
さらに活用例は言い逃れができない。羽田空港ロビーでの活用例は人の姿が全く同じだ。渋谷のビルの活用例では、他人の2つの写真を合成しているのだから、これは確信犯である。無名の人の写真なら著作権など無視してもかまわない、という意識なのだろう。しかも、エンブレム問題が起きなければ、活用例での無断使用は表面化しなかったことになる。
審査委員の上から目線も鼻につく。専門家の評価を素人には理解できない、といったニュアンスのコメントには恐れ入る。専門家には良くても、一般の人たちが良いと思わなければ意味がないということが認識できていない。これまでは専門家の仲間内で、なぁなぁで通用していたのだろうが、素人から指摘されて慌てふためいている様は滑稽だ。本来なら素人には分からなくても、これは著作権に抵触する可能性があるからダメだ、と指摘するのが本当の専門家ではないのか。
そもそも応募条件が、著名な賞を2回以上受賞していなければいけない、ということがズレている。むしろ、無名でも才能を秘めた若いデザイナーに世界に羽ばたくチャンスを与えるようなコンペの方が、東京でオリンピック・パラリンピックを開催する意義にふさわしい。
招致委員会が招致運動の時に使用していたエンブレムは、公募で選ばれた美大生(当時)の作品のようだ。あのエンブレムの方が素直な気持ちが表れていて、素人の自分にはよほど良い。
最近のコメント