新自由主義と集団的自衛権
憲法学者の多くが憲法違反とし、各種の世論調査でも反対が多数を占める法案が強行採決された。それらの調査では、集団的自衛権については賛成する人の中にも、性急な採決には反対の人も少なくない。
最近の右傾化の背景には新自由主義の流れがある。たとえば改正労働者派遣法は、自由に解雇できる安い労働力を国内に作り出し、企業の国際競争力を高めるためのものだ。国際的にはグローバル企業を海外で守るというのが集団的自衛権の目的の一つである。たとえば邦人保護では、そのほとんどはグローバル企業の海外赴任社員とその家族が該当する。もちろん誰であっても邦人を守ることは重要だが、紛争地域を取材するジャーナリスト(政府にとって煙たい存在が多い)などは見殺しにされる可能性が高い。説明が曖昧なホルムズ海峡の疑念なども、グローバル企業を守るという視点なら法運用がほぼ予測できる(附帯決議など法的拘束力がない)。
新自由主義は小さな政府もうたっている。行政の無駄をなして簡素化すこと自体は良い。だが、この間に行政機構などが小さくなっているだろうか。最たるものは国会議員の定数削減問題だ。政党交付金などは不公平な制度である(個人的には違憲と思う)。
一方、小さな政府の名のもとに進められたのが総理官邸への権力集中である。それを可能にした一つが小選挙区制だ。小選挙区制では、立候補者が2人なら51%、3人なら34%、4人なら26%の得票率で、理論的には全議席を独占できる。そして、選挙で信任を受けた「議員様」が最後は多数決で決めるのが民主主義であり、国会外の声など無視して良いという理屈がまかり通る。
それを象徴するのが自民党の総裁選挙ではないだろうか。報道によれば、無投票にするために対立候補の推薦人にかなり圧力がかけられたようだ。選挙になると安倍批判票がかなりでるので、それを恐れたものと思われる。それだけ自民党員の中にも安倍批判が潜在しているということの証であろう。事実、その前の総裁選挙では党員・党友票で石破氏が上回った。
国会議員投票で逆転した理由を何人かの議員に聞いたら「安倍さんなら汗をかいても良いが、石破さんでは汗をかきたくないという議員が多かった」ということらしい。おい、おい、おい。「国民のために汗をかく」という認識が完全に欠落しているではないか。自民党総裁はほぼ総理大臣という状況の中では、国民のために誰が総裁としてふさわしいかが重要だろう(別に石破氏支持ではない)。
これら国内の右傾化はアメリカの世界戦略という枠組みの中で進められている。アメリカの大統領選挙も絡んでくるが、安倍政権は集団的自衛権で役割を終えた。日本で自民党政権を安定的に維持するには、首をすげ替えた方が良い、という動きが始まってくるかも知れない。
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