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2015年10月26日

多層構造

 横浜のマンションが傾斜したニュースが連日のように報じられている。マンションの販売会社、元請建設会社、1次下請会社、2次下請施工会社‥‥と業界の多層構造にも関心が向けられるようになった。多層構造は建設業界に限ったことではない。自分が取材のフィールドとしている物流業界もそうだし、東日本大震災の時には部品業界のサプライチェーンが注目された。

 どのような業界においても、多層構造は需要の波動への対応であり、また、下請けほど低単価になるという点が共通している。さらに、各業界固有の事情が加わる。建設業界でいえば施工技術といった要素である。建設業界あるいは建築・建設会社といっても、ある施工部分については、できる会社とできない会社がある。建設や土木の業界では、多層構造における「上下関係」だけではなく、施工技術などによる分業的な「水平関係」も加わるので、より複雑な構造になっている。

 いずれにしても多層構造の下に行けば行くほど作業単価が安くなるために、偽装など手抜きによるコスト削減が行われる。今回は外形上も目に見える形で建物が傾斜したために、データの改ざんや偽装が発覚した。おそらく、マンションに限らず、他の建築物や建造物でも、同じようなことが行われており、業界内の暗黙の了解になっているのではないかと推測される。

 手抜きをしても、一般の人に分かることはまずない。構造上で実際に必要な強度に安全率を加味して設計基準が設定されているので、基準を下回って施工してもすぐには問題が発覚しないからである。そこで、マンションの購入者や一般の人たちからすると、「まさかデータ改ざんが行われているとは思わなかった」ということになるが、マンション販売や建設業界の関係者からすると、「まさかデータ改ざんがバレルとは思わなかった」というのが本音ではないかと思われる。

 トラック運送業界も多層構造になっている。ある調査によると7次下請けというケースもあった。中間でマージンが引かれるので、最下層の実運送事業者の運賃は安くなる。それを補うためにコンプライアンス・コストを削って経営を維持している。だがコンプライアンス・コストは一般には見えないため、事故などで発覚しなければ「結果オーライ」になっている。それに対して部品産業では、何次下請けであっても検収で不良品が多ければ自ずと仕事が来なくなってしまう。品質という点で歯止めがかかっている。

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