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2015年11月 2日

TPPと非完全障壁

 TPPについて関係各国の基本合意ができたようだ。アメリカの大統領選挙やその他、最終的な締結までには流動的な要素はあるだろう。しかし、基本的な流れは変わらないものと思われる。先週は各省庁でTPPによる影響予測などを内部的にまとめたようだ。ごく一部の概要を発表した省庁もある。

 TPPによる影響を定量的に予測するのは難しい。内容がほとんど公表されていないので、政府関係者以外では、影響予測はほとんど不可能と言っても良い。

 不思議なのは、マスコミがほとんどが関税問題しか報じていないことだ。もちろん経済的影響としては関税問題が大きい。だが、社会全体からみると非関税障壁の行方の方が、影響がはるかに大きいはずだ。

 たとえば医療分野では、自由診療に道が開かれると国民皆保険制度の崩壊にもなりかねない。年金制度でも、企業年金などは確定給付から、日本型401Kともいわれる確定拠出への移行が進んでいる。もし、本格的な401Kの導入といったことになると、不十分ながら老後の保障だったものが投資になり、老後の資金を失う人が増加する可能性が高い。

 労働市場では、すでにTPPへの準備が進行しつつある。残業代ゼロやホワイトカラーエグゼンプション、改正労働者派遣法といった一連の動きは、「成長戦略」の名のもとに労使関係を「雇用」から「契約」に転換しようとするものである。いずれは、人件費の安い外国人労働者への門戸開放といったことも考えられる。

 物流分野では、関税撤廃(段階的撤廃も含む)による物流業界への影響は間接的である。取引している荷主企業が関税撤廃でどのようになるかで国内物流が変わってくる。そのような意味で間接的影響なのである。だが、国内の物流業界に対して、もっと大きな直接的影響を及ぼすのは非関税障壁がどのようになるかである。

 島国日本でも、外国の物流会社のトラックが国内の道路を走るようになる可能性もある。だが、TPPやFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)も含めた経済グローバル化の中で、国内の物流への影響や変化について、真剣に論じられているとは思えない。

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