軽減税率の茶番劇
すったもんだの末に生鮮食品と加工食品という結論になった。軽減税率の適用である。生鮮食品だけか、加工食品も含めるかで綱引きが行われていたが、突然、外食もという話が出てきたので驚いた。今後、外食と加工食品の線引きなどもあるが、これは大した問題ではない。肝心なのは1兆円という財源をどうするかだが、来年の参議院選挙の後まで持ち越されそうだ。それにしても、中小規模の食品小売業はレジのシステム変更や事務処理作業などの負担が増えて大変だろう。
この間の自民、公明、政府のやり取りを観ていると、軽減税率の適用範囲に国民の関心を引き付けることで、増税するか据え置くかという基本的な議論から国民の目を逸らす茶番劇としか思えない。政治家の発言をニュースなどで聞いていても、「増税'感"の軽減」を強調するが、「税の軽減」とは言っていない。マスコミもお先棒をかついで、本質から論点を逸らす役割を立派に果たした。そのご褒美に新聞は軽減税率が適用される(雑誌などはこれから検討)。
重要なのは財源問題だ。当初の4000億円から6000億円増えて1兆円の財源が必要になる。工夫すれば捻出できるというのなら、なぜ増税か、という根本的な問題になる。さらに、その気になれば財源を何とかできるのなら、本気で財政健全化に努力しろ、ということになる。
結局、軽減税率をめぐる茶番劇は選挙対策に過ぎない。低所得者はそのためのダシに使われただけだ。連立政党に対して、これまでの特定秘密保護法や安全法制でのツケを返済し、今後の憲法改正に向けた手付金を払うとすれば、現政権にとって1兆円は安い買い物なのだろう。その一方で、赤字国債を発行するのに必要な特例公債法を2020年度まで5年間延長する方向で検討しているという報道もある。
40日ほど前になるが、政府関係の各種委員などをしているある経済学者(ですら)が、「アベノミクスで日本経済はルビコンを渡った」と言ったので、えっ、と驚いた。もう引き返せないから、何でもありかと思ったものである。財政健全化を実現する決意があるのなら、特例公債法を延長せずに退路を断つ、という意味でのルビコンを渡ってもらいたいものだ。ルビコン川どころか、三途の川を渡る泥船に国民を乗せて「1億総玉砕」はいただけない。
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