バス事故
また貸切バスが大きな事故を起こした。この事故を受けて、国交省と警視庁が東京・新宿の都庁近くで、夜間に出発するツアーバスの抜き打ち監査をした。その結果、監査をした6台中の5台で何らかの違反があった。監査に参加した1人に監査の2日後に会ったら、違反が常態化しているとしか思えない、と話していた。
貸切バスは規制緩和後の15年間に2倍近い約4500社に増えた。東京商工リサーチが、同社の企業データベースを基に一般貸切旅客自動車運送事業者を分析している。それによると、従業員数10名未満が31.31%、10名以上30名未満が31.14%で、30名以下の企業が60%強を占める。売上高でも1億円未満が33.76%、1億円以上5億円未満が42.49%で、売上高5億円以下が約4分の3という状況だ。企業規模が小さいことも、ツアー会社や斡旋会社に対して弱い立場にある1因だ。
軽井沢町で起きたスキーツアーバス事故の4日後に、A県B郡C町のトラック運送事業者を取材で訪ねた。C町は人口が約2万人で、D県やE県と隣接している中山間地である。偶然なのだが、同社はバスとタクシーも行っている。それぞれ別法人にしているが、経営者は同じで本社も同じ事務所にある。そこで、バス事故についての雑談になった。
今回の事故を起こした会社では、本来26万円の運賃を19万円で請けていたと報道されている。ところが、仮に帳簿上では26万円になっていても、斡旋会社に紹介料としてバックして実質は19万円以下といった「抜け道」もあるようだ。それでも監査では帳簿上が26万円になっていれば、それ以上は調べられないという。縦割り行政もその1因のようだ。道路運送法や旅客自動車運送事業運輸規則などは国交省自動車局旅客課、旅行業法は観光庁、労働基準法は厚労省である。
なぜ一般道路を走っていたのかという疑問もある。これは推測になるが、1運行いくらという実質的には請負制賃金になっていたことも考えられる。1運行ごとの定額賃金で、高速料金は運転手の自己負担なら、高速料金を浮かすために一般道を走ることもある。あるいは個人ではなく会社として、運賃が安いために高速を使わず一般道を走るように指示した可能性もあり得る。
運転手が2人とも亡くなったのでバス会社の社長は内心ホッとしているかも知れない、と国交省のあるキャリア官僚が呟いた。どのような指示をしていたかを本人たちの口から直接聞くことができなくなったからである。
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