そうか5年か‥
3月11日は東日本大震災から5年ということで、先週はテレビや新聞がこぞって被災地の現状などを採り上げた。テレビの映像からも、遅々として復興が進んでいないように感じる。自分もこの5年間に、何度か被災地に足を運んだ。部分的にみると少しずつ復興しているが、全体を俯瞰すると進捗が極めて遅い。
東日本大震災の発生から約2カ月後、ゴールデン・ウィーク明けぐらいから、「東日本大震災で日本の物流はどのように変わるか」といったテーマで話をしてくれ、というオファーが入りだした。その後、約1年ぐらいの間に、同テーマで何度も話をした。
それ以前から日本の企業にとってはグローバル化と国内市場縮小への対応が、企業戦略上の大きなテーマだった。その中で、企業間競争にどのように勝ち残っていくか。合従連衡なども含めて、この大きな変化に対応するための企業行動が進んでいた。当然、その企業行動に沿って物流も変化してきた。
一言で表現するなら、東日本大震災はこの大きな流れを加速したのである。たとえば、被災地にあった工場が全壊したと仮定する。工場を再建するには多額の投資が必要だ。一方、緊急態勢で同工場が担当していたエリアへの商品供給は、他の工場の増産でカバーしている。それなら市場が縮小する国内で工場を再建するよりも、グローバル戦略として海外に投資した方が将来性がある、と考えるのは当然だ。
輸出入も同様で、昔から北米や欧州などとの交易が多かったこともあって(それだけの理由ではないが)、日本海側の港と比べると太平洋側の港が栄えてきた。しかし、現在ではアジア諸国との輸出入の方が多くなっている。物流コストなどの面からみると、日本海側の港の方が有利だが、物流はシステムであり港を変えるのは簡単ではない。そこでシフトは緩やかだったが、東日本大震災は、その流れを加速化したのである。
日本は高齢化と人口減少、そして人口偏在が進んでいく。これが日本社会の大きな流れだ。被災者の人たちの中には、避難している地方で新しい生活をはじめ、被災地には戻らないという人たちもいる。これは、日本社会の構造変化の加速化という見方もできる。したがって被災地の復興においても、津波などの災害に強いまちづくりは当然だが、人口減少や高齢化という社会の変化に対応し、これからの地域社会のあり方を先取りした形での復興が必要なのではないだろうか。
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