「潮騒」の島
ピーヒョロロ、ピーヒョロロ‥‥。明け方にスマホで主要な新聞各紙の記事をチェックしていると、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台として有名な神島の民宿の一室である。
鳥羽で仕事があった翌日、鳥羽マリンターミナルから市営定期船に乗って神島に渡った。往きは答志島の和具港経由で、復りは菅島の菅島港経由だった。神島は渥美半島の伊良湖岬から約3.5㎞なので愛知県の方が距離的には近いが、鳥羽市である。
「潮騒」は何度か映画になっている。初江を吉永小百合さん、新治を浜田光夫さんが演じたのと、山口百恵さんと三浦友和さんが主演した映画が記憶に残っているが、それ以外にも3回、計5回も映画化さていることを神島に行って初めて知った。その他にテレビやラジオドラマにもなっている。
三島由紀夫が「潮騒」を書いたのは1954年。小説を書くに当たっては約1カ月ほど神島に滞在したというが、当時の島の人口は1400人以上だった記されている。しかし現在は約440人で人口減少が進んでおり、高齢者が多く見られた。
島の最高峰は灯明山(171m)で、全体的には港のある方からせり上がるように集落が密集している。反対側は急こう配で海になっているので、人家は見当たらなかった。集落は人がすれ違うのがやっとぐらいの通路が迷路のようになっていて、僅かな隙間を隔てて寄り添うように人家が建ち並んでいる。なかには長く人が住んでいないような家屋もあり、また、更地になっているところも点在した。
だが、島の人たちはみんな人が良い。密集する人家の隙間の迷路などを写真に撮っていると、小学校2、3年生ぐらいの子供たちが「何してんの」と寄ってくる。夕方近くに定期船の発着場の近くで写真を撮っていたら、おばさんが「時間がないよ、早く乗らないと船がでちゃうよ」と声をかけてくれた。「今夜は泊まりだよ」と言ったら「そうだったの」と笑った。
民宿の食事も豊富で、夕食も朝食も食べきれなかった。翌日は賢島まで足を延ばして帰ってきた。
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