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2017年1月23日

爆悔い?

 「国内の大手小売業は中国客の爆買いに頼っていても良いのだろうか‥‥円安が今後も続いたとしても、爆買いが続くとは限らない‥‥観光客は増え続けても、それは純粋な観光であり、買物が目的の訪日ではなくなる‥‥爆買いに頼るような経営に傾注し過ぎるといけない」。

 これは2015年8月17日づけの当コラムの一部だ。そこでは「中国政府が外国製高級品の関税率を大幅に引き下げたら、日本で爆買いする必要はなくなる」と書いたのだが、実際には昨年春に中国政府が海外からの土産品への関税を引き上げた。もちろんそれだけの理由ではないし、訪日観光客は中国人だけでなく、台湾人や韓国人も多い。また、訪日客が富裕層から中間所得層にまで拡大していることも、1人当たりの購買単価の低下に影響している。

 観光庁の発表によると、2016年の訪日客の消費総額(推計)は前年比増で過去最高になったが、伸び率は前年から大きく縮小し、1人当たりでは4年ぶりに前年を割ったという。爆買いを当て込んでいた小売業界は、免税店出店戦略や販売手法などの再検討に迫られているようだ。訪日客の購買指向も時計や宝石などの高額品から、化粧品や食品など日用品に移行している。

 いずれにしても、小売業が爆買いに過度に頼るような経営をしていたことの弊害が、早くも現れたことになる。不思議なのは小売業の経営のプロのはずの人たちが、少し過去の歴史を振り返れば分かるような愚をなぜ犯してしまうのか、である。目先の一時的な現象に目を奪われ、長期的な視点に欠けていると言われても仕方がない。もっとも、自分の社長任期中だけ利益を出して高配当であれば、退任後はどうなっても構わないというのも、処世ではあるが‥。

 ところで、アメリカのトランプ新大統領が就任早々に打ち出した過去の政策からの転換の1つに、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉がある。たまたまアメリカで大統領就任式があった日に、講演で中国地方の某市にいき、セミナー終了後に2人の地元の運送企業経営者と飲みにいった。その時、自動車メーカーの中にはメキシコに工場があるがアメリカにはない会社もあるようで、そのメーカーの仕事をしているために今後は国内の物流にも影響が出てくるのではないかと懸念していた。

 経済がグローバル化してくると、国内だけで事業展開していても、国際的な影響を免れることはできない。「爆悔い」を残さないような経営のかじ取りが重要になってきた。

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