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2017年11月 3日

暑さと寒さの差拡大

 無意識の習慣的行動とは恐ろしい。11月になって、さすがに朝夕は冷え込むようになってきたが、晴れた日の日中は少し歩くと汗ばむぐらいだ。先日、交差点で信号待ちしている時に、なぜか、いやに寒いなと感じた。よくみたら日陰に入って信号が変わるのを待っていて、そこに風が吹いてきたからだった。夏はずっと暑かったし、秋になっても日中は暑いくらいだった。信号待ちする時には自然と日陰に入るような習慣になっていたのである。

 いずれにしても、近年、日本は1日の温度差が大きくなってきたように感じる。これは気温だけではない。経済、社会も格差が拡大している。

 先週はその格差拡大を加速する転換点になったと思う。日銀が10月31日の金融政策決定会合で、追加の金融緩和策を決めた。機関や個人投資家、それに不動産業などは恩恵に浴することになるだろう。だが、陽の当たらない陰にいる中小企業や多くの国民にとっては、さらに冷たい北風を吹き込まれたようなものだ。

 また同日には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、運用の資産構成割合(ポートフォリオ)の見直しを発表した。国内株式比率を12%から25%に引き上げるというのだ。外国株式も25%にする。これにより国内債券の比率は大幅に下がることになる。

 昨年4月29日のコラムで、「札は刷れ刷れ 刷るならば 『日出ずる国』の このYenを 刷り増すほどに バラ撒けば これぞ真の『黒田節』」と書いた。また、今年9月8日のコラムでも、「GPIFの資産を株式市場に回そうという動きが具体的に始まる懸念が高まってきた」と書いておいた。その通りになってきただけなので驚きはしない。だが、この間の政府の財政政策と日銀の金融政策で拡大してきた格差が、これからますます拡大していくことになるのではないかと思う。

 自分の主たる取材フィールドであるトラック運送業界をみても、消費税増税後の4月以降、経営が厳しくなってきた事業者が増えている。しかも時間の経過とともに、経営が厳しい事業者の企業規模が少しずつ大きくなってきた。

 報道によると、日銀の追加緩和に賛成したのは正副総裁と研究者出身の5人の委員で、反対した4人は金融機関や民間企業出身者だったようである。実態経済に対する認識の違いがあるのではないかというのが、「日陰者」の感想である。

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