右か左か
関西に行った帰りに、新幹線で珍しくA席になった。中部や関西の出張では新幹線を利用するが、ほとんど往復ともD席が多い。つまり行きも帰りも富士山が見える側だ。ところが今回は新大阪からの帰りにA席になったのである。
まだ明るいうちの移動だったので、車窓からの景色をみていたが、いつもと風景が違う。けっこう珍しい光景を目にすることができた。それに熱海近辺では初島がはっきり見えた。この前、初島に行ったのは数年前だったが、その時を思い出した。同じ新幹線でもどちら側の席に座るかでだいぶ違うものだと思った。
右か左かという点では、大阪に来たなと実感することの1つがエスカレーターである。東京では左側の人は歩かず、急ぐ人は右側を歩いて上ったり下りたりする。だが、大阪ではその逆で、急ぐ人は左側を歩いて追い越していく。
ある時、関西出身の人にそのことを話したら、即座に「大阪がグローバル・スタンダードです」と言われてしまった。たしかに世界的にみると、ほとんどの国では左側の車線が追越車線になっている。すみません。総てを「東京ローカル」の視点からしかみることができない偏狭さを反省します。
そういえば、ずっと昔のこと。右か左かで面白い話があった。同じ会社に入った2人の生き方である。1人は会社で出世がしたくて、上司など目上の人にゴマすりばかりしている。それに対してもう1人は、労働組合活動に精をいれていた。だが、労働組合内で「出世」したいようで、上ばかり見ている。
共通の知り合いが何人かで久しぶりに顔を合わせたときに、この2人が話題に上った。その中の1人が「あの2人は社会に出ても昔と変わりないな。2人とも上ばかりみて生きている点では全く同じだ。違うのはカレイとヒラメの違いだけ」といったので大笑いした。カレイは右側に目が2つついているので右上ばかりみている。それに対してヒラメは左側に目が2つなので左上ばかりみているというわけだ。
ところで自分はというと、意見が対立する場合には双方を同じように取材するのが鉄則だ。だが、両論併記だけはしないことにしている。自分自身で判断し、是非を明らかにすることが本来の役割である。両論併記の方が簡単で、しかも処世としては利口なのだが。
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