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2018年3月26日

永遠の30代

 作家の内田康夫さんが亡くなられた。内田さんの名探偵・浅見光彦シリーズは好きだった。全部は読んでいないが、かなりの作品を読んでいる。

 何しろシリーズの作品が多いので、読んだか読んでいないか、分からなくなってしまう。書店の文庫本の棚に並んでいる背表紙を見て、あれ、これは読んだかな、と考え込むことがしばしばあった。タイトルだけでは思い出せない時は、目次をみて読んだかどうかを思い出すこともある。それでもダメなら本文を斜め読みして確認。読んでいなければ購入して、読み進めていくうちに失敗した読んだことがある、と気づくようなこともあった。

 報道によると、同シリーズは114冊で累計発行部数が9700万部という。ついつい印税収入がどれほどになったのだろう、といった卑しい考えが浮かんでくる。

 なぜ、浅見探偵が好きかというと、あまり頭の負担にならずに、すいすい読めるということも大きな要素だ。もちろん、ストーリーの面白さも当然である。

 だが、それ以上に楽しいのは、全国いろいろな地方に連れて行ってもらえることだ。浅見探偵と紙上で旅ができることが何より楽しい。タイトルに地名がついたものも多いので、タイトルの地名で本を買ってしまうような面もある。その地方はどんな風景なのだろうか。また、そこでどのようにストーリーが展開するのだろうかという楽しさである。

 このように浅見探偵に旅に誘ってもらうのだが、自分もけっこういろいろな地方を訪ねているので、行ったことのある地域が出てくることも少なくない。小説の中の風景描写などを読むと、あぁ、あそこはそうだったなと思い出す。あるいは、小説に登場する地方の近くまで行ったことがあるような場合、再び仕事で近くまで行く機会があったら、少し足を延ばしてぜひ行ってみようという気持ちになる。

 そんなことで、内田さん=浅見探偵にはもっともっと様ざまな地方を案内してもらいたかった。それが叶わなくなってしまったのは残念だが、これからも浅見探偵のように永遠の30代で取材の旅を続けたいと思っている。

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