華やかさと厳しさ
1年2カ月ぶりに秋田に出張した。新幹線で移動するこの時期の楽しみは、窓から満開の桜が観られることである。大宮から仙台あたりまでは満開だった。菜の花の黄色と咲き誇る桜の花の組み合わせは良い。この時期にしか分からないのだが、桜の木は日本中いたるところにあるものだ。仙台を過ぎると少しずつ5分咲き、3分咲きと寂しくなっていくのも、北への移動を実感させる。
最初に横手に寄って取材してから秋田に向かった。横手に行く時にはよくトラブルに遭遇する。8年前の1月下旬には、翌日が山形だったので、新庄駅前のホテルに1泊することにしていた。ところが夕方、横手駅に行くと大雪で電車が上下線とも運行中止になっていた。切符を事前に購入していたので、JRの運賃負担で1人だけタクシーで新庄に送ってもらったのだが、料金を見たら2万7000円ぐらいになっていた。その数年後にも北上から横手に行こうとしたら、北上線がストップしていて運行再開の見通しがないとのことで、急遽、大曲経由にしたこともある。さらに今回は大曲から奥羽本線で横手に向かったが、1つ手前の後三年駅で停まったまま信号故障で動かなくなり、50分遅れだった。
秋田のホテルのテレビでケーシー高峰さんの訃報を知った。ケーシーさんとは常磐線の特急列車で4、5回、同じ車両に乗り合わせたことがある。ある時、いわき市内での取材が終わって泉駅からの帰り、時間があるので駅の近くの喫茶店に入った。するとケーシーさんが、カウンター席で3、4人の地元のおばちゃんと思しき人たちに冗談を言って笑わせていた。おそらく同じ電車だなと思ったら、案の定そうだった。
常磐線で見かけるケーシーさんは、いつもマネジャーを連れずに1人だった。座る席も同じで、5号車の上野からいわき方面に向かって1番前のドアのそばだ。この列はA席とD席しかない。つまり左右とも1人掛けで、ケーシーさんはいつもA席だった。自分は少し離れた席だったが、トイレに行く時などふっと見ると、主観的な思い入れかも知れないが、少し寂しそうで孤独そうに感じた。華のあるケーシー高峰を演じるのも大変なんだな、と思ったものである。
ところで秋田からの帰りは、仙台から福島、宇都宮あたりまではかなり強く雪が降っていた。往きは桜が満開で華やかだったが、今度は咲き誇る桜に容赦なく雪が降り注いでいる。華やかさと厳しさを感じながら移り行く窓の外を見ていた。
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