しっぺ返し
新型コロナウイルスが日本でも猛威を振るっている。感染拡大を懸念してイベントの中止などが相次いでいる。自分の身近なところでも懇親会が中止になったりしているが、経済活動や日常生活など社会全体が委縮してしまうのではないかと心配だ。
日常の仕事においても影響がでてきた。とくに気を遣うのは取材だ。取材先を訪ねて名刺交換などの挨拶が終わると、「マスクはどうしましょうか」と先方の意向を聞くようにしている。応接室で向かい会って、最低でも1時間あるいはそれ以上の時間を過ごすことになるからだ。先般、ある高層オフィスビルに入っている会社を訪ねた。すると、取材の本題に入る前の雑談の中で、「当ビルに入っている企業の1社から感染者が出たかもしれない疑いがあり、陽性となれば全館閉鎖かフロアー単位での閉鎖の可能性があると内々に連絡がきた」という話があった。その会社の本社機能の中にはテレワークが可能な部署と、そうでない部署がある。その人は後者の方なので閉鎖となると大変だ。
ところで、新型コロナウイルスに関するこの間の一連のニュースの中で、印象に残ったのは政府チャーター機だった。武漢在住の邦人を日本に戻すために政府がチャーターした飛行機は5機(5回)だが、総て全日空(ANA)である。絶対に日航(JAL)ではないだろうと予想していたが案の定だ。これには自民党政権から民主党政権になり、そして自民党政権に戻ったという政権交代が関係している。
そもそも日航は脆弱な経営体質だったが、これには地方選出の有力政治家の顔を立てて採算的に厳しい航路を増やしてきたような面があったことも否定できない。いずれにしてもリーマンショックなどを機に、経営危機に見舞われた。自民党政権下の2009年8月に国交省は日航の経営改善のための有識者委員会(日本航空の経営改善のための有識者会議)を立ち上げた。
だが、同年9月16日に当時の民主党の鳩山内閣が発足。すると「御用学者」として有識者委員会を解散し、JALタスクフォースを設置したのである。タスクフォースは日航の経営改善を企業再生支援機構に引き継ぎ、企業再生法が適用になった。金融機関は債権を放棄(約5200億円)し、支援機構からは公的資金(3500億円)が注入された。株式は100%減資である。日航は立ち直り2012年3月期には2049億円の営業黒字なったが、経営危機時の赤字繰り越しで法人税が免除になった。その他、日航優遇に対して全日空は猛反発した。
その後、自民党政権となったが、民主党政権下で短期間に経営再建した日航よりも、全日空を優遇するようになった。そのもっとも象徴的なしっぺ返しは、羽田空港の発着増枠の割り振りだった。2013年3月の国内線の増枠では全日空8枠に対して日航は3枠。2014年3月の国際線増枠では全日空11枠、日航4枠だった。このようなことから政府チャーター機は全日空だろうと予想していたのである。
ちなみに自分は、国内線では全日空である。ローカル空港で日航や日航系しか飛んでいなければ別だが、それ以外は全日空を利用している。別に「しっぺ返し」ではない。
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