ステークホルダー
オリンピック・パラリンピックの開催が延期になった。それにしても正式に延期を決めるまでの時間が長かった。新型コロナウイルスが世界的に蔓延している状況を見れば、予定通りの開催が困難なことは分かるはずだ。それにも関わらず決定が遅れたのは、ステークホルダーが多く、またそれぞれのステークホルダーの思惑が複雑にからんでいるからだろう。もっとも、今回の新型コロナウイルスへの対応では、初期段階におけるWHOの中国寄りの姿勢も大いに問題があったが…。
オリンピック・パラリンピックにおける最大のステークホルダーは選手たちでなければならない。だが、実際にはスポンサーやIOC、日本政府の関係者などのステークホルダーの方が上位にいることが明らかになった。選手ファーストは建前で、選手は手段に過ぎないのである。本当に選手ファーストならば、もっと早く開催延期その他を決めてやるべきだ。
テレビ放映権を持つステークホルダーをはじめとするスポンサー企業は経済的な損得。IOCのバッハ会長は次期改選で不利にならないように。安倍総理は自民党総裁任期や4選を視野に。小池都知事は直前の都知事選にらみ。その他のステークホルダーの思惑が優先されたのだと思わざるを得ない。
新型コロナウイルスといえばイタリアで患者数や死者数が多い。今回の選手置き去りのオリンピック・パラリンピックの開催延期にいたる過程を見ていて、ローマのコロッセオを思い出した。コロッセオは人と猛獣を戦わせ、それを見て楽しむための競技場である。猛獣に勝てば一躍ヒーローとして祭り上げる。だが、人が敗れることは死を意味するという残酷なものだ。
オリンピック・パラリンピックの選手たちも約2000年前に猛獣と戦った戦士たちと同じような扱いなのだろうか。ステークホルダーたちにとっては手段でしかなく、利権や金儲け、自己保身、そして娯楽の対象なのかも知れない。そんなことを思うと、コロッセオと新国立競技場がダブって見えてくる。新国立競技場も立派なレガシーになることだろう。
今回の開催延期を機に、オリンピック・パラリンピックの目的やあるべき姿を原点に返って考えるべきではないか。
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