「悪夢」に終止符を
なぜか最近、ふとした思い付きや、変な予感が当たるので不思議だ。8月28日の朝も約2時間ほど散歩した。いつも散歩しながらいろいろなことを考える。締め切りが近い原稿があれば歩きながら頭の中で原稿を書く。28日は何もなかったので、あれこれ妄想しながら歩いた。
すると、夕方に安倍首相が記者会見することを思い出し、直感的に辞意を表明するかも知れない、と思ったのである。もし、自分がスキャンダラスな新聞の編集責任者だったら、今朝の朝刊トップの見出しは「安倍首相 今夕会見 辞意表明か」にしただろうと思った。もちろん、最後の「か」は注意しないと読めないぐらいの小さな字である。これなら「まさか」と思って、コンビニやスタンドで売れるだろうと妄想していた。
その後、仕事をしていて首相会見のことなど忘れていたが、15時ごろ「辞意を表明する見通し」というニュースの見出しをネットでみた。通信社や新聞社の配信なので裏づけは確かだろうと思った。事実、直感の通り当日夕方の記者会見で安倍首相が辞意を表明した。
新聞社や通信社、テレビ局の番記者や政治部は、首相会見で辞意表明の可能性をかなりの確率で知っていたはずだ。それを「突然」であるかのように報じている。与党の政治家も「突然のことで驚いている」などとコメントしているが、白々しい限りだ。
夜のニュースを観ていて、やっと7年8カ月にわたる「悪夢」から解放されると実感した。「悪夢」というのは、①経済政策では「アベノミクス」。②法律では「特定秘密保護法」、「安全保障関連法」、「共謀罪法」など。さらに③お友達政策では「森友・加計学園」問題、「桜を見る会」。④政治的には「河井克行・案里両被告」の問題、「秋元司容疑者」の問題、これらにも関連しているのが「黒川弘務検事長定年延長」問題。⑤国会運営や行政面では、説明責任回避、公文書改ざん、官僚人事と忖度の蔓延。そして⑥コロナ対策の失敗だ。
「アベノミクス」の恩恵にあずかった人たちは経済政策を評価している。長期にわたる金融緩和政策で円安、株高になったが、株高の裏には上場投資信託(ETF)を通した日銀の株の買い支えもある。また、同じく日銀の国債保有による財政政策は財政再建に逆行している。長期にわたる低金利政策は、銀行の諸手続きの手数料値上げなど、そのツケを国民に転嫁してきた。さらに、雇用拡大といっても不安定な安い労働力としての非正規雇用者の増加により、正規雇用者の賃金を上げても所得水準は上がらず、国内需要の拡大やデフレ脱却には至っていない。不安定な雇用条件による雇用拡大は、コロナ禍でその実態が露わになった。
そのような安倍政権が長期間続いた一番の理由は小選挙区制にある。小選挙区制の弊害が顕著に現れたケースだ。また、議院内閣制では自民党の次期総裁がほぼ総理大臣になる。自公連立に維新や、立憲民主党との新党に参加しない国民民主党の一部の議員も大連立に加わる可能性はある。いずれにしても次期首相も保守政権には違いない。だが、保守政権でも「悪夢」を継承する政権ではなく、まともな保守政権になってほしいものだ。
それにしてもキャリア官僚も大変だ。7月に幹部クラスの人事異動があったばかりなのに、首相が変われば短期間で再び異動する人も出てくる。権威をかさに大きな態度をとっていた官邸官僚が、出身省庁に戻って冷遇されるようなら「まともな保守政権」、出身省庁に戻って厚遇されるようなら「悪夢継続政権」という見方もできる。
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