« キャンセル | トップページ | 宇宙時間 »

2022年11月 7日

時の移ろい

Photo_20221103165901 (斜陽館=青森県五所川原市)

 太宰治の生家「斜陽館」に行った。1907年に建造され、現在は国の重要文化財建造物に指定されてる。今から115年も前に建てられたのだから、かつての津島家の栄華を実感させる。

 だが、津島家の繁栄は多くの小作農の年貢によって成り立っていたというのも事実だ。斜陽館を見学しながら、ここで生活していた津島家の人たちと、当時の小作農の人たちのくらしを想像・比較してしまう。一所懸命に働いてやっと年貢を納めたら、間もなく厳しい冬が訪れる。小作農の人たちは豪雪の冬にはどのようにして暖を取りながら過ごしたのだろうか…。

 その津島家も戦後、この豪邸を手放すことになった。斜陽館のパンフレットによると、1948年に角田氏が住宅として購入。同氏は1950年に旅館「斜陽館」として開業し、その後、1976年には黒滝氏の所有に移る。だが、多数の太宰ファンが宿泊したという斜陽館も旅館としての歴史は46年間で幕を閉じ、1996年に旧金木町(現五所川原市)が買い取って現在は太宰治記念館「斜陽館」になっている。

 太宰は1948年に39歳で没したが、前年の1947年に「斜陽」という中編小説を発表している。それによれば時代の流れ、社会の変化を敏感に感じ取っていたのだろうと思う。だが太宰にとって、時の移ろいは同時に自分のサライの喪失を意味する。人間の心理は複雑だ。小説の「斜陽」から旅館名にしたというが、「斜陽館」とは感慨深い。

 入館前に写真を撮った時には夢中で気づかなかったのだが、帰り際に写真を撮りながら訪れる前に想像していたのとは逆だったことに初めて気づいた。館内を見学している間に時間が経過し、太陽の光の角度が傾いていたからだ。この豪邸は西側に面していたのか、と。

« キャンセル | トップページ | 宇宙時間 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« キャンセル | トップページ | 宇宙時間 »