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2023年3月27日

ドラマより劇的

   Photo_20230324081201 日本銀行前の桜=東京都中央区

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表(侍ジャパン)が優勝した。1回目と2回目にも優勝しているが、率直にいって、当時はアメリカの本気度が今ほどではなかった。今回はアメリカも、投手はともかくバッターに関してはベストに近いメンバーで臨んできたので、ワールド・ベースボールの名にふさわしい優勝だったように思う。

 それに、まるで筋書きのあるドラマのようだった。いや、ドラマ以上に劇的だった。とりわけ準決勝での村上選手の逆転サヨナラの1打などは、映画の1シーンのようで感動的だった。さらに決勝のアメリカ戦では、9回2アウトで大谷投手とトラウト選手が対決。どちらもエンゼルスのスター選手が投打で真剣勝負を演じ、三振で日本が優勝を決めた。まさに計算されつくしたドラマのラストシーンのようである。

 さらに佐々木投手をはじめ若いピッチャーの活躍。13安打で大会記録を更新した吉田選手、準決勝の9回裏に代走で起用されて快足を発揮した周東選手など、各選手が自分の持ち味を発揮し、全員野球で優勝をつかんだ。テレビで見ていても、ベンチの雰囲気が過去のチームとは全く違うように感じられた。

 また、日系アメリカ人のヌートバー選手が日本代表として活躍した。ヌートバー選手は、楽天の田中将大投手や、現在は現役を引退したが「ハンカチ王子」といわれて甲子園を沸かせた斎藤佑樹投手などが高校選抜でアメリカに行った時のホームスティ先の少年だったという。その少年が今では大リーガーになり、日系アメリカ人として初めて日本代表に選出されるなど、これもドラマのようだ。

 投打に活躍してMVPに輝いた大谷選手と、年長者としてチームを支えたダルビッシュ投手はともに日ハム時代には当時の栗山監督の下でプレーした。日ハム時代に栗山監督がいなかったら、現在の大谷選手の「二刀流」はなかったろうと思う。今回のWBCでも選手それぞれの個性と特徴を活かす栗山采配が光っていた。栗山監督の選手を「信じて任せる」姿勢は、スポーツチームの監督だけでなく、様々な組織の長が学ぶべきだろう(全員が能力の高いメンバーだから可能なのだが…)。さらに、「今日だけは憧れを捨てて勝ちにいこう」という大谷選手の言葉も、なるほどな、と感心させられる名言だ。

 一方、侍ジャパンのWBC優勝で割を食ったのが岸田総理大臣だ。電撃的なウクライナ訪問のニュースが霞んでしまった。野球に例えるなら同点で迎えた9回裏2アウトの場面で、3塁ランナーの岸田選手が、意表を突くホームスチールでサヨナラ勝ちといったところ。しかし、テレビも新聞も侍ジャパンを大きなニュースとして扱った。WBCのニュースより、尺も短く(テレビ)、スペースも小さい(新聞)。さらに「侍ジャパン WBC優勝」ではいくつかの新聞が号外を出し、その1紙を都心の街頭で受け取った。だが、「岸田総理 ウクライナを電撃訪問」の号外を少なくとも自分は確認していない。いっせい地方選挙が近いのに完全に思惑が外れてしまったようである。これって、全マスコミが挙って「偏向報道」をしたことになるのかな?‥。

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